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ハーネス加工とは?種類・用途・費用相場まで解説

電子機器や自動車、産業機械など、あらゆる製品に欠かせない電気配線の束である「ワイヤーハーネス」。
しかし、「ハーネス加工を外注したいが、どのような種類があるのか」「自社製品に最適な加工方法は何か」「費用相場はどれくらいか」など、疑問を抱える担当者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、ハーネス加工の基礎知識から種類、用途、費用相場まで解説します。
ハーネス加工とは
ワイヤーハーネスは、電力供給や信号伝達を行うための重要な部品です。このワイヤーハーネスを、製品の要求仕様に合わせて電線の切断から端子・コネクタの取り付け、結束まで一貫して製造する工程が「ハーネス加工」です。
ハーネス加工は、単に電線をつなぎ合わせる作業ではなく、製品の性能、信頼性、安全性に直結するため、高度な技術と厳格な品質管理が求められます。
たとえば、自動車のエンジンルームでは高温や振動に耐え、医療機器では微細な信号を正確に伝送する必要があります。これらの要求に応えるためには、適切な電線やコネクタの選定、そして確かな加工技術が不可欠です。
ハーネス加工の基本工程
ハーネス加工は、複数の専門的な工程を経て完成します。ここでは、主要な基本工程について解説します。
電線の切断
ワイヤーハーネス製造の最初の工程は、電線を必要な長さに正確に切断することです。この工程では、通常、自動電線切断機が使用され、ミリ単位の精度で大量の電線を効率的に加工します。切断精度は、その後の工程の品質や製品全体の寸法精度に影響を与えるため、非常に重要です。
被覆剥き(ストリッピング)
切断された電線の両端から、導体部分を露出させるために被覆(絶縁体)を剥がす作業です。被覆剥きには、機械式のストリッピングマシンが一般的に用いられますが、特殊な電線や高精度が求められる場合には、熱式やレーザー式のストリッパーが使用されることもあります。この工程で芯線を傷つけないよう、適切な刃の調整や剥き長さの管理が品質確保の鍵となります。
圧着加工
被覆を剥いた電線の導体部分に、圧着端子を取り付ける工程です。圧着加工は、電線と端子を機械的にかしめることで、電気的な接続と機械的な強度を同時に確保します。手動工具から半自動、全自動の圧着機まで様々な方法がありますが、重要なのは適切な圧着工具とダイスを使用し、JIS規格やUL規格などの基準を満たすことです。圧着部の引張強度試験や断面検査などにより、品質が厳しく管理されます。
コネクタ・端子の取り付け
圧着された端子をコネクタハウジングに挿入したり、電線を直接コネクタに半田付けしたり、IDC(Insulation Displacement Connector:絶縁被覆除去コネクタ)で接続したりする工程です。コネクタの種類は多岐にわたり、製品の用途や環境に応じて適切なものが選定されます。正確な極性や嵌合(かんごう)状態の確認は、誤配線によるトラブルを防ぐ上で不可欠です。
配線の結束・テーピング
複数の電線をまとめ、保護し、製品内部での取り回しを容易にするための工程です。結束には、ケーブルタイ(タイラップ)、スパイラルチューブ、コルゲートチューブ、熱収縮チューブ、ビニールテープなどが使用されます。これにより、配線の整理整頓、外部からの物理的保護、ノイズ対策、識別の容易化といった効果が得られます。
検査工程
完成したワイヤーハーネスが設計通りに機能するかを確認するための最終工程です。主な検査項目には、導通検査(全ての電線が正しく接続されているか)、絶縁抵抗検査(電線間の絶縁が保たれているか)、耐電圧検査(規定の電圧に耐えられるか)、そして外観検査(物理的な損傷や誤配線がないか)などがあります。これらの検査は、専用の検査機器を用いて全数または抜き取りで行われ、製品の品質と安全性を保証します。
ハーネス加工の種類
ワイヤーハーネスは、その構造や用途によって様々な種類に分類されます。ここでは、代表的なハーネス加工の種類を紹介します。
単線ハーネス
一本の電線に端子やコネクタを取り付けた最もシンプルなタイプのハーネスです。比較的単純な配線や、特定の部品への電源供給、信号伝達などに用いられます。コストを抑えやすく、加工も比較的容易です。
多芯ハーネス
複数の電線を束ねて、一本のハーネスとして加工したものです。多くの信号や電源をまとめて伝送する必要がある場合に用いられ、機器内部の配線スペースを効率的に活用できます。電線の種類や本数、配列によって多種多様な設計が可能です。
フラットケーブルハーネス
複数の電線が平らな帯状に並べられたケーブルを使用したハーネスです。薄型で柔軟性があり、折り曲げやすいという特徴があります。基板間の接続や、可動部での配線、省スペース化が求められる機器に多く採用されます。コネクタへの接続も容易で、誤配線のリスクを低減できます。
同軸ケーブルハーネス
中心導体を絶縁体で囲み、さらにその外側を外部導体(シールド)と被覆で覆った構造のケーブルを使用したハーネスです。高周波信号の伝送に適しており、外部からのノイズの影響を受けにくいという特徴があります。通信機器、映像機器、計測機器などで重要な役割を果たします。
シールドハーネス
電線全体または特定の電線群を、金属箔や編組線などのシールド材で覆ったハーネスです。外部からの電磁ノイズ(EMI)の侵入を防ぎ、またハーネスから発生するノイズ(EMC)の漏洩を抑制する効果があります。医療機器やFA機器、高ノイズ環境下で使用される製品で信頼性の向上に貢献します。
高耐熱・耐環境ハーネス
高温、低温、振動、油、水、薬品など、過酷な環境下での使用を想定して設計・加工されるハーネスです。特殊な絶縁材料や被覆材、コネクタが用いられ、高い耐久性と信頼性が求められます。自動車のエンジンルーム、工場設備の内部、屋外設置機器などに不可欠です。
ハーネス加工の主な用途
ハーネス加工されたワイヤーハーネスは、現代社会のあらゆる製品に不可欠な部品として使用されています。
自動車業界
自動車には、エンジン制御、車室内電装品、ボディ制御、安全装置など、数千本ものワイヤーハーネスが使用されています。特にEV/HEVでは、高電圧に対応した特殊なハーネスが求められ、安全性と信頼性が最優先されます。
産業機械・FA機器
工場で稼働するロボット、NC工作機械、制御盤、センサー、モーターなど、多岐にわたる産業機械にワイヤーハーネスが組み込まれています。これらの機器は、高い信頼性と耐久性が求められるため、耐油性、耐屈曲性、耐振動性などに優れたハーネスが使用されます。
医療機器
CTスキャン、MRI、超音波診断装置、手術用ロボットなど、医療機器の内部にも精密なワイヤーハーネスが使用されています。人命に関わるため、極めて高い信頼性と安全性、そして滅菌処理に対応できる素材が求められることがあります。
家電製品
エアコン、冷蔵庫、洗濯機、テレビ、パソコンなど、私たちの身の回りにある多くの家電製品にもワイヤーハーネスが組み込まれています。コストと量産性が重視される一方で、安全性や耐久性も確保する必要があります。
通信機器・情報機器
サーバー、ルーター、基地局、PCなどの通信・情報機器では、高速信号伝送や大量のデータ処理に対応するため、高周波特性に優れた同軸ケーブルハーネスや、省スペース化を実現するフラットケーブルハーネスなどが使用されます。
航空宇宙・防衛産業
航空機、衛星、ミサイルといった分野では、極めて高い信頼性、軽量化、そして極端な温度変化や振動に耐える耐環境性が求められます。特殊な素材や加工技術を用いた、高付加価値のハーネスが採用されます。
ハーネス加工の費用相場
ハーネス加工の費用は、様々な要因によって大きく変動します。以下のような要因を理解し、適切な見積もりを取得することが重要です。
電線の種類と長さ
使用する電線の種類(汎用線、特殊線、シールド線など)や導体サイズ、長さによって費用は変わります。
コネクタ・端子の種類
使用するコネクタや端子の種類、メーカー、調達コストが費用に影響します。特殊なコネクタは高価になる傾向があります。
加工工程の複雑さ
被覆剥き、圧着、半田付け、結束、テーピングなどの工程数や難易度、特殊な加工(例えば、防水処理やモールド加工)の有無によって費用が変わります。
ロット数(生産数量)
一般的に、ロット数が多いほど単価は安くなります。小ロット生産では、初期費用や段取り費用が単価に占める割合が大きくなります。
納期
短納期や緊急対応を求める場合、追加料金が発生することがあります。
検査内容
全数検査、特殊検査(耐電圧、絶縁抵抗、X線検査など)の有無や厳格さによって費用は変動します。
設計・開発サポートの有無
業者による設計提案、試作対応、VA/VE提案などのサポートを受ける場合、その費用が見積もりに含まれることがあります。
具体的な費用相場は、上記の要因によって一概には言えませんが、見積もりを依頼する際は、詳細な仕様(図面、部品リスト、数量、納期など)を明確に提示し、複数の業者から相見積もりを取ることをお勧めします。
ハーネス加工業者の選び方
自社製品の品質と信頼性を確保するためには、信頼できるハーネス加工業者を選定することが不可欠です。以下のポイントを参考に、最適なパートナーを見つけましょう。
技術力・加工精度の確認ポイント
業者がどのような設備を保有しているか、どのような加工技術に強みがあるかを確認しましょう。JIS規格やUL規格などの認証取得状況、過去の実績、特に自社製品と同種のハーネス加工実績があるかどうかも重要な判断材料です。試作対応や技術的な相談に柔軟に応じられるかどうかも見極めるポイントです。
対応可能なロット数
自社の生産計画に合ったロット数に対応できるかを確認します。小ロット・多品種少量生産に強みを持つ業者もあれば、大規模な量産体制を構築している業者もあります。将来的な生産量変動にも対応できる柔軟性があるかどうかも考慮しましょう。
納期対応力
短納期対応や、急な仕様変更、緊急時の対応など、納期に対する柔軟性も重要な選定基準です。生産リードタイムや、部品調達能力についても確認しておくと良いでしょう。
品質管理体制
ISO 9001などの品質マネジメントシステム認証の有無はもちろん、具体的な検査体制(どのような検査機器を使用しているか、検査員のスキルレベル、検査記録の管理方法など)を詳細に確認することが重要です。トレーサビリティが確保されているかも確認し、万が一のトラブル発生時に原因究明が迅速に行える体制が整っているかを見極めましょう。
設計・開発サポートの有無
単なる加工だけでなく、製品の設計段階から協力してくれる業者であれば、より効率的で高品質な製品開発が期待できます。VA(Value Analysis)/VE(Value Engineering)提案、コストダウン提案、部品選定のサポート、試作段階からの共同開発など、開発部門にとって心強いサポートを提供してくれる業者を選ぶと良いでしょう。
まとめ
本記事では、電子機器の品質と信頼性を支える重要な技術であるハーネス加工について、その基礎知識から基本工程、種類、主な用途、費用相場、そして適切な業者の選び方までを解説しました。
ワイヤーハーネスは、製品の性能を最大限に引き出し、安全性を確保するための不可欠な要素です。開発担当者の皆様にとって、ハーネス加工に関する深い理解は、製品設計の最適化、コスト削減、そして市場競争力の向上に直結します。
自社製品に最適なハーネス加工を実現するためには、単にコストだけでなく、技術力、品質管理体制、納期対応力、そして設計・開発サポートまで含めた総合的な視点で業者を選定することが重要です。信頼できるパートナーとの連携により、高品質で競争力のある製品開発を推進していきましょう。