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電子機器の実装不良の症状と原因一覧|主なトラブルと対策を解説
電子機器の製造において、プリント基板に電子部品を搭載する実装工程は、製品の品質を左右する重要なプロセスです。しかし現場では、はんだ付けのミスや部品の配置ズレなど、さまざまな実装不良が発生します。実装不良を防ぎ、製品の信頼性を高めるには、どのような症状が起こり、何が原因なのかを把握しておく必要があります。
本記事では、電子機器の実装工程で発生しやすい代表的な不良症状や原因の一覧を紹介します。あわせて、現場で実践できる対策もわかりやすく解説します。
実装不良とは
まずは、実装不良の定義や発生しやすい工程・部位、放置した場合のリスクについて見ていきましょう。
実装不良の定義
実装不良とは、プリント基板上の銅箔パターン(パッド)と電子部品の端子が、設計どおりに正しく接合されていない状態を指します。電気的に導通していないだけでなく、機械的な接合強度が不足しているケースや、本来接触してはいけない部分がはんだでつながっている状態も含まれます。
実装不良が発生すると、製品が正常に動作しないだけでなく、回路の破損につながる場合があります。電子機器の小型化が進むなか、微細な接合部の品質を安定させることは、製造現場の課題の一つです。
発生しやすい工程と部位
実装不良は、主に次の工程で発生します。
- リフロー工程:はんだを熱で溶かし、部品を基板に固定する工程
- マウンターによる部品配置:電子部品を基板の決められた位置に載せる工程
- クリームはんだの印刷工程:部品を接合するはんだを基板に塗る工程
特にクリームはんだの量や位置がずれると、その後のはんだ付けにも影響します。そのため、印刷工程では正確な管理が必要です。
また、実装不良が発生しやすい部位には、次のようなものがあります。
- ICの端子周辺:ピンの間隔が狭く、はんだが隣の端子とつながりやすい部分
- チップ部品の端子部分:小型部品と基板をはんだで接合する部分
部品が小型になるほど目視での確認が難しくなるため、工程ごとの管理と検査が重要になります。
放置した場合のリスク
発生した実装不良を放置した場合、製品出荷後に深刻な損害をもたらすおそれがあります。出荷前の検査で発見できれば手直しで済みますが、市場に出てから不具合が顕在化した場合は製品の回収や無償交換が発生し、莫大なコストが生じることになるでしょう。
さらに製品の停止や発火といったトラブルが発生すると、企業の社会的信用を大きく損なう事態になりかねません。実装不良は、製造現場だけの問題と捉えず、企業経営における重大なリスクとして対策を講じることが重要です。
代表的な実装不良の症状
実装工程で発生するトラブルには、見た目で確認できるものから、製品を動かして初めてわかるものまでさまざまな種類があります。ここでは、代表的な実装不良を3つのタイプに分けて紹介します。
はんだ付け不良による症状
はんだ付け不良とは、はんだの量や加熱状態などに問題があり、部品と基板が正しく接合されていない状態です。代表的な症状には、次のようなものがあります。
- 不濡れ:はんだが基板や部品の端子になじまず、うまく広がらない状態
- 赤目現象:はんだが正しく付かず、接合部から基板の色が見える状態
- 冷えはんだ:加熱が不十分で、はんだが十分に溶けず、接合が弱くなる状態
これらの不良があると、部品と基板の間で電気が正常に流れなくなります。その結果、接触不良や機器の動作停止を招く原因となります。
部品のズレや浮き上がりの発生
部品を基板に配置する際のズレや、はんだ付け時の部品の浮き上がりも代表的な実装不良です。主な症状には、次のようなものが挙げられます。
- 位置偏位:部品が本来の位置からズレたり、斜めになったりする状態
- マンハッタン現象(ツームストーン現象):チップ部品の片側だけが持ち上がり、部品が立ち上がる状態
部品のズレや浮き上がりが起きると、端子が基板から外れて電気が流れなくなる場合があります。また、隣の部品に接触して、ショートなどの不具合を生じさせます。
ショートや断線の発生
ショート(短絡)と断線は、回路の動作に致命的な影響を与える重度な不良症状として挙げられます。ショートとは、本来つながってはいけない部分がつながり、電気が誤った経路に流れる状態です。代表的な症状に、はんだブリッジがあります。これは、隣り合う部品の端子同士がはんだでつながってしまう現象です。
一方、断線とは、本来つながっている回路が途切れる状態を指します。はんだが十分に付いていない「未はんだ」や、接合部に亀裂が入る「クラック」などが原因になります。
ショートは部品の発熱や破損につながることがあり、断線は機器の動作停止を招きます。そのため、どちらも出荷前の検査で確実に発見する必要があります。
実装不良が起こる主な原因
実装不良は、はんだの量や加熱条件、部品や基板の状態など、さまざまな要因によって発生します。まずは主な原因と不良症状の関係を一覧で確認しましょう。そのうえで、代表的な3つの原因を詳しく解説します。
原因一覧表
| 原因の分類 | 現場で起きている具体的な問題 | 発生しやすい主な不良症状 |
|---|---|---|
| はんだを塗る量や位置のズレ | ・メタルマスク(はんだを塗るための型)のズレや摩耗・はんだペーストの量が多すぎる、または少なすぎる・印刷機の位置合わせのズレ | ・ショート(はんだブリッジ)・未はんだ、はんだ不足・部品の位置ズレ、立ち上がり |
| 加熱時の温度や時間の設定ミス | ・リフロー炉の温度設定が適切でない・予熱不足や急激な加熱・高温状態を保つ時間が不足している | ・はんだ付け不良(赤目、不濡れ)・部品の浮き上がり・はんだボール |
| 部品や基板に付着した汚れや湿気 | ・長期保管による金属表面の酸化・基板や部品が湿気を吸収している・フラックス(はんだ付けを助ける薬剤)の劣化や油分の付着 | ・はんだの弾き、赤目現象・ボイド(はんだ内部の空洞)・クラックや断線 |
はんだを塗る量や位置のズレ
はんだを塗る量や位置がズレると、部品を正しく接合できません。はんだを印刷する際に使うメタルマスク(はんだを塗る位置を決める薄い金属板)に問題があったり、汚れが詰まっていたりすると、はんだペーストの量が変わります。
- はんだが多すぎる:隣のパターンとつながり、ショートの原因になる
- はんだが少なすぎる:未はんだや接合強度の不足につながる
- 印刷位置がズレる:部品の位置ズレや傾きを発生させる
このように、はんだの量と位置は、実装品質を左右する大きな要素です。印刷状態を適切に管理し、安定した量と位置ではんだを塗布する必要があります。
加熱時の温度や時間の設定ミス
リフロー炉の温度や加熱時間が適切でない場合も、実装不良の要因となります。例えば、予熱が足りないと、フラックスが十分に働かず、はんだが部品や基板になじまない「不濡れ」などが起こります。
一方、加熱温度が高すぎたり、加熱時間が長すぎたりすると、基板や電子部品に熱による負荷がかかります。その結果、部品の浮き上がりや接合部のクラックを生じさせることがあります。基板上の部品の大きさや配置を考慮し、全体に適切な熱が伝わるよう温度と時間を設定することが大切です。
部品や基板に付着した汚れや湿気
電子部品や基板上の汚れ・湿気、金属表面の酸化は、はんだの接合品質を著しく低下させます。特に長期間保管された部材は吸湿しやすく、加熱時に内部の水分が急激に蒸発することで、はんだボールやボイド(内部の空洞)を発生させます。
また、金属表面に形成された酸化膜は、はんだの濡れ性を阻害し、弾き現象を引き起こします。作業時に付着する皮脂やホコリも健全な接合を阻む要因となるため、温湿度管理された環境での保管と、作業エリアのクリーンな状態維持を徹底することが欠かせません。
実装不良への対策と検査方法
ここでは、実装不良を防ぎ、早期に発見するための方法を解説します。
検査機器を使った不良の早期発見
実装不良の流出を防ぐには、工程ごとに検査を行い、問題を早い段階で発見することが有効です。主な検査機器には、以下のようなものがあります。
- 3Dはんだ印刷検査装置(SPI):はんだを印刷した直後に、塗布量や厚み、位置などを自動で確認する
- 自動外観検査装置(AOI):リフロー後に、部品の位置ズレやはんだブリッジなどを自動で検査する
- X線検査装置:目視では確認しにくいBGAなどの接合部を撮影し、内部のボイドや未はんだなどを確認する
このように、検査する工程や対象に応じて機器を使い分けることで、不良を早期発見できます。
製造時の温度やはんだ量の管理
製造条件を安定させることも、実装不良を防ぐうえで大切です。クリームはんだは、温度や粘度の影響を受けやすい材料です。そのため、使用前の保管温度や撹拌時間などをルール化し、状態を一定に保ちます。
また、リフロー炉の温度プロファイル(加熱する温度と時間の設定)は、定期的に測定して確認します。季節や室温が変わったときも、必要に応じて設定を調整しましょう。
さらに、窒素(N2)を炉内に送り、酸素濃度を低く保つ方法もあります。酸化を抑えることで、はんだが部品や基板になじみやすくなります。
不良を防ぐための基板設計の工夫
実装不良の対策は、製造工程だけでなく、基板を設計する段階からはじまります。製造しやすさを考慮した設計(DFM)を取り入れることで、実装時のトラブルが減らせるでしょう。例えば、隣り合うパッド(部品をはんだ付けする部分)の間隔を適切に確保すると、はんだブリッジを防ぎやすくなります。
また、熱の伝わり方が異なる部品を近くに配置すると、加熱時に温度差が生じ、部品が立ち上がる「マンハッタン現象(ツームストーン現象)」を引き起こす原因となります。パターン配線やサーマルリリーフ(熱が伝わりすぎるのを抑える配線形状)を工夫することも対策の一つです。
設計部門と製造部門が早い段階から連携し、製造しやすい基板を設計することで、実装不良を未然に防げます。
まとめ
電子機器の実装不良には、はんだ付け不良や部品のズレ、ショート・断線など、さまざまな症状があります。原因も、はんだの塗布や加熱条件、部品・基板の状態など多岐にわたります。
不良を防ぐには、SPIやAOI、X線検査などを使って工程ごとに検査するだけでなく、はんだや温度などの製造条件を適切に管理することが必要です。さらに、設計段階から製造しやすい基板にしておくことも、実装不良の発生率を大幅に低減できます。実装工程だけでなく、設計から検査までの各段階を見直し、自社の製品や製造環境に合った対策を取り入れましょう。
