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鉛フリーはんだで増える不良とは?原因と実践的な対策を解説

電子機器の製造や基板実装では、環境への配慮から鉛フリーはんだが広く使用されています。しかし、従来の鉛入りはんだ(共晶はんだ)からの移行に伴い、不良に悩まされるケースは少なくありません。これは、融点の高さや濡れ性の低さなどの違いにより、作業や温調の難易度が上がっているためです。不良を減らすためには、原因を理解し、作業条件や環境を整えることが重要になります。
本記事では、鉛フリーはんだで不良が増加する背景、代表的な不良事例、発生原因、品質を高める実践的な対策などを解説します。
鉛フリーはんだで不良が増加する背景
最初に、鉛フリーはんだで不良になりやすい要因について確認しましょう。
従来はんだとの成分の違い
従来広く使用されていた鉛入りはんだは、錫(Sn)と鉛(Pb)を主成分とする合金であり、加工しやすく扱いやすい特性を持っていました。一方で鉛フリーはんだは、環境や人体への影響に配慮し、錫に銀(Ag)や銅(Cu)などを添加した合金で構成されています。
鉛を含まない成分構成に変わったことで、合金としての物理的な性質が大きく変化しました。特に、熱に対する反応や金属同士の親和性が変わり、作業現場での扱いづらさにつながっています。成分の違いが、製造工程全体に影響を与えていることを理解しておきましょう。
高融点化に伴う熱負荷の影響
共晶はんだの融点が約183℃であるのに対し、鉛フリーはんだの融点は約217~220℃です。従来よりも30℃以上高いため、はんだを溶かすには、より高い温度での加熱が必要となります。
加熱温度が高くなるほど、基板や搭載された電子部品にかかる熱負荷も大きくなります。過度な加熱は、耐熱性の低い部品を破損させたり、基板自体を変形させたりするリスクが生じます。
ただし、加熱が不足すると、はんだが十分に溶融せず、接合不良を招きます。そのため、必要な温度まで確実に加熱しつつ、基板や部品への熱負荷を抑える温度管理が重要です。
濡れ性と流動性の低下による影響
鉛フリーはんだは、溶融した状態での「濡れ性(金属表面に広がる力)」と「流動性」が、従来に比べて低い傾向を持っています。はんだが濡れ広がりにくいため、接合部分の隙間にスムーズに入り込まなかったり、表面張力で弾かれたりするケースも見られます。
濡れ性の低さは、接合面のはんだ量が不足したり、不均一な形状に固まったりする原因となります。接合速度も遅くなるため、加熱時間を長く設定しなければならず、結果として熱負荷がさらに増す悪循環に陥りかねません。この濡れ性の低さをカバーするための工夫が求められます。
鉛フリーはんだで起こる代表的な不良
鉛フリーはんだを使用した基板実装では、特性や作業条件によって、さまざまな不良が発生します。ここでは代表的な不良について解説します。
濡れ不足によるイモはんだ
イモはんだとは、はんだが十分になじまず丸く盛り上がった状態で固まってしまう現象です。鉛フリーはんだの流動性と濡れ性の低さが主な原因であり、加熱不足やフラックスの機能低下によって発生しやすくなります。
見た目が丸く固まっているだけでなく、金属の結合が不完全なため電気的な導通が不安定になりがちです。衝撃や振動が加わった際に、剥がれ落ちてしまうおそれがあり、初期検査を通過しても運用中に接触不良を起こす危険なケースといえます。
はんだブリッジとボイドの発生
はんだブリッジは、隣り合うピンやランド間にはんだが架橋し、不要な短絡(ショート)を起こす現象です。流動性の悪さや表面張力の影響により、余剰はんだが離れきれずに残ってしまうケースが多いです。
ボイドは、はんだ内部や接合面に気泡(空洞)が残ってしまう現象を指します。加熱時にフラックスのガスが抜けきらず、閉じ込められることで生じます。ボイドが大きくなると、接合面積が減少して機械的強度や熱伝導性に影響を及ぼします。特に、発熱する電子部品を実装する場合は、放熱性の低下にも関係するため、発生状況を確認しておきたい不良のひとつです。
ウィスカ発生による短絡リスク
ウィスカとは、はんだの表面から針状やヒゲ状の金属結晶が伸びる現象です。鉛フリーはんだにおいて、内部応力や環境負荷が原因で発生しやすいことが知られています。時間が経過してから徐々に発生・成長するため、出荷後の経年劣化トラブルとして現れるのが特徴です。
成長したウィスカが隣接する回路に接触すると、予期せぬショートを引き起こす危険性が高まります。高い信頼性が求められる産業機器などでは、特に警戒される不良現象です。
不良が発生する主な原因
鉛フリーはんだによる実装不良は、作業環境や条件のわずかな要因によって発生します。ここでは、不良を引き起こす代表的な3つの原因を紹介します。
加熱不足や過加熱による温度不備
鉛フリーはんだは融点が高いため、加熱が不足すると十分に溶融せず、濡れ不足やイモはんだを誘発します。接合する金属表面まで十分に温まっていなければ、はんだが広がらず、安定した接合状態を作れません。
ただ、はんだを十分に溶かそうとして温度を上げすぎたり、加熱時間を長くしたりすると、過加熱によるトラブルが発生します。フラックスの効果が早く失われるほか、金属表面の酸化が進み、電子部品や基板を痛める原因にもなります。適正な加熱温度と時間の範囲が狭いことが大きな要因といえるでしょう。
フラックス活性度の不足と劣化
フラックスは、金属表面の酸化膜を除去し、はんだの濡れ性を高めるといった大きな役割を担っています。しかし、鉛フリーはんだの高い作業温度に対して、フラックスの耐熱性が不足していると、はんだが溶ける前に効果が低下してしまいます。
また、保管や管理の不足によってフラックスが劣化すると、活性度が低下して酸化膜を効率よく除去できなくなります。フラックスの選定ミスや品質劣化は、はんだの弾きやボイドの発生に直接的な要因となるため、保管条件や使用期限も確認しましょう。
部材の酸化と熱容量のバラつき
基板のランドや電子部品のリード線が酸化していると、鉛フリーはんだが濡れ広がりにくくなり、接合不良の原因になります。保管状態が悪い部材や、長期間保管していた部材を使用する際は、表面の状態を確認しておきましょう。
また、基板上に大型部品と小型部品が混在すると、部位によって熱容量に差が生じます。熱が逃げやすい箇所では加熱不足になり、熱がこもりやすい箇所では過加熱が起こります。このような温度差が生じると、基板全体の実装品質にもばらつきが出てしまいます。
不良を防ぐための実践的な対策
鉛フリーはんだによる不良を減らすには、加熱条件やフラックス、部材の状態を適切に管理することが重要です。ここでは、製造現場で取り入れやすい3つの対策を紹介します。
適切な加熱温度と時間の調整
実装ラインでは、リフロー炉やはんだごての温度を適切に設定し、実際の基板温度を確認することがポイントです。リフロー工程では、予熱によって基板全体を徐々に温めることで、部品への急激な熱負荷を抑えられます。
本加熱では、使用するはんだが十分に溶融する温度まで加熱しながら、部品に過度な熱を加えないように条件を調整します。基板上の部品には熱容量の違いがあるため、設定温度だけを見て判断するのではなく、温度センサーなどを使って実際の基板温度を測定しましょう。はんだの種類や基板、部品の仕様が変わった場合は、同じ設定をそのまま使用せず、適切な条件を改めて確認してください。
最適なフラックスの選定と管理
鉛フリーはんだを使用する場合は、高い作業温度に対応できるフラックスを選定します。フラックスには、金属表面の酸化膜を除去し、はんだが濡れ広がりやすい状態を作る役割があります。はんだの種類や工法に適した製品を選び、高温環境でも十分な活性を保てるか確認しましょう。
はんだペーストを使用する場合は、メーカーが指定する使用方法に従って状態を整えてから活用します。冷蔵保管されている製品は規定の方法で温度を戻し、必要に応じて撹拌してペーストを均一な状態にします。こうした準備を適切に行うことで、濡れ不足やボイド、ブリッジなどの不良を抑えられます。
部品の保管管理と予熱の実施
基板や電子部品は、温度や湿度などの保管条件を管理し、酸化や吸湿を防ぎます。防湿保管庫や防湿袋などを活用し、メーカーが定める保管条件に従って管理しましょう。
長期間保管した部材や吸湿した部材を使用する場合は、メーカーの指示に基づいてベーキング処理(乾燥処理)を行います。ベーキングは部材に含まれる水分を除去するための処理で、適切な条件は部品の種類や耐熱温度によって異なります。
手作業ではんだ付けする場合は、基板や部品の大きさに合ったはんだごてやコテ先を選び、必要に応じて予熱を行います。作業対象に適した熱量を安定して供給することで、加熱不足や過加熱を防ぎ、安定したはんだ付けを行えます。
まとめ
鉛フリーはんだは、従来の鉛入りはんだとは融点や濡れ性などの特性が異なります。そのため、従来と同じ条件で作業すると、イモはんだやボイド、はんだブリッジなどの不良が発生する場合があります。
不良を減らすには、まず実際の基板温度を測定して適切な温度プロファイルを設定します。使用するはんだや工法に合ったフラックスを選び、保管条件や使用期限も管理しましょう。さらに、基板や電子部品の保管環境を整え、吸湿した部材にはメーカーの指定に沿って乾燥処理を行います。
鉛フリーはんだの特性を踏まえて、温度・フラックス・部材をそれぞれ管理することが、安定した実装品質を保つポイントです。作業条件を数値で確認し、設備や部材の状態を継続的に管理することで、はんだ付け不良の発生を抑えられます。
